繰り上げ返済の善し悪しとは~不動産投資に於ける考え方
繰り上げ返済とは
繰り上げ返済とは文字通り月々の支払に加えて別途残債の返済を行う事です。「安定して収益を得られるようになりキャッシュに余裕が出て来たので、繰り上げ返済を検討している」というオーナーは数多く存在しており、最終的な支払額や月々の支払額を下げる効果があります。当ページでは、“繰り上げ返済はした方が得なのか?”について解説したいと思います。
繰り上げ返済の種類
繰り上げ返済には、大きく分けて「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つがあり、それぞれ以下の通り特徴があります。
期間短縮型とは
期間短縮型とは、毎月の返済額が同じままで早期に完済する繰り上げ返済です。例えば、年利1.2%で3,000万円を借り入れ35年で完済する予定であった場合、10~15年後に300万円を別途支払うことで月々の返済は同じまま返済期間31年程に短縮した上に金利を100万円弱節約できます。(※金利1.2%で計算した場合の試算です。)

返済額軽減型
返済額軽減型とは、返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす繰り上げ返済です。上記の例(年利1.2%で3,000万円を借り入れ35年で完済)ですと、10~15年後に300万円を別途返済することで月々の返済を約12,000円減らす事ができ、最終的な返済額を約50万円節約できる事になります。

繰り上げ返済のメリット・デメリット
不動産投資の繰り上げ返済には以下の通りメリット・デメリットがあります。
メリット
繰り上げ返済は元本に充当されるため、支払利息を減らす事が可能です。また、変動金利の場合、3~5年毎に金利が見直されますので、金利が上昇してしまった際のダメージ軽減効果としても利用出来ます。
デメリット
ある程度まとまった額を返済するため、当然ですが手元のキャッシュが大きく減ってしまいます。また、金融機関の一部では“借り換え”の対策として、繰り上げ返済時に違約金を設定しているケースがありますのでご注意ください。
繰り上げ返済活用術
メリット・デメリット双方が混在する「繰り上げ返済」ですが、上手に活用する事で不動産投資での収益を更に高める事が可能です。繰り上げ返済をした方が良いケースや注意点について解説します。
早ければ早い程お得に
前述した通り、繰り上げ返済分に関しては借入金の金利ではなく「元本」に充てられますので、早ければ早い程お得になります。例えば、3,500万円を2%で借入し、10年後乃至は20年後に300万円を返済した場合だと、以下の通り差異が発生します。
※元利均等返済・期間短縮型で計算
繰り上げ返済時期 | 最終的な返済額 | 差異 |
---|---|---|
無し | 48,695,220円 | +0 |
10年後に繰り上げ返済 | 46,924,321円 (返済期間31年7か月) |
-1,770,899円 |
20年後に繰り上げ返済 | 47,781,230円 (返済期間32年3か月) |
-913,990円 |
したがって、繰り上げ返済をお考えであれば早めに決断する事をお奨め致します。
金利が上昇してしまったケース
変動金利の場合、金利の見直しによって月々の返済が大きくなるリスクを捨てきれません。実際には大きな上昇は考えづらいというのが定説ですが、万が一上昇してしまった際には繰り上げ返済で月々の返済額を減らす・返済期間を少なくする等で対策する事ができます。ただし、一時的にキャッシュが減ってしまいますので、時期は慎重に検討した方が良いでしょう。
既に複数の物件を所有している
既に複数の物件を運用している場合には繰り上げ返済は有効な手段と言えます。早ければ早い物件程繰り上げ返済の恩恵を受けますので、例えば「借入期間が浅く残高が多いものから先に集中して返済する」若しくは「金利の高いローンから先に返済していく」のように繰り上げ返済することで、最終的な支払額を大きく下げる事が可能です。

次の物件を狙う際は注意
繰り上げ返済は返済額を下げる効果がある一方で、キャッシュを大きく減らしてしまいます。そのため、「2戸目、3戸目と不動産を増やしていきたい」「キャッシュに余裕が無い」「修繕を控えている」といったケースであればお奨め出来ません。不動産投資を行う以上、予期せぬ事態にも備えられるようにある程度のキャッシュは常に残しておく必要がありますので、余裕がない場合には控えた方が賢明でしょう。
- 結 論
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繰り上げ返済は早ければ早いほどお得
違約金が発生するケースもあるため規約は確認
2戸目を狙っている場合はキャッシュフロー重視がベター