敷金返還が義務化?~法改正で変わる原状回復

不動産を賃貸する際に必ず「敷金」は、現在法的拘束力の無いガイドラインに沿って返還を行っていますが、2020年の民法改正により義務化される事が決定しています。経年劣化・通常摩耗の違いや費用負担について知っておきましょう。

Risk3借主の原状回復義務

経年劣化でひび割れたコンクリート

不動産賃貸の事を法律用語で「賃貸借契約」と言い、当該契約を締結した場合、貸主は物を貸す義務、借主は賃料を支払う義務と借りた物を借りた時点での状態で返却する義務(原状回復義務)を負います。
ただし、居住を目的とした不動産の賃貸借に於いては民法でなく“借地借家法”という特別な法律が適用され、より借主側が有利な条件となっています。
退去時にオーナーはどこまで費用を負担すべきなのか、法令やガイドライン、習慣等に基づいた取扱いについて解説致します。

オーナーが負担する費用は?

借主に「原状回復義務」が課せられている事は前述しましたが、これを全て借主側の負担としてしまっては、生活の基盤となる家の賃借がし辛くなってしまいます。
そこで、国は法律と共にガイドラインにてこの原状回復の費用負担を定めています。

「原状回復」の定義

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

つまり、経年劣化による通常摩耗であればオーナー側がその補修義務を負い、通常利用を超えた範囲の摩耗・故障・毀損等は借主側の負担となります。
また、ガイドラインでは通常の使い方で発生する摩耗や破損と通常の使用による結果でない物が例示されており、費用負担の目安を定めています。

損耗・毀損の事例

経年劣化による通常摩耗とみられるもの(オーナー負担)
日照により変色したフローリングや畳
家具の設置によるカーペットの凹み
テレビ、冷蔵庫設置痕(黒ずみ)
エアコン設置によるビス穴
日照等の自然現象によるクロスの変色
壁等の画鋲やピンの穴
ハウスクリーニングや消毒の費用

通常利用の範囲外とみられるもの(賃借人負担)
雨等によって変色したフローリングや畳
落書き等の故意による毀損
タバコ等で変色したクロス
壁に空けたネジ穴やクギ穴
天上に付けた照明器具の痕
ペットによる柱等の傷や臭い
鍵の紛失や破損による取替え

※上記はあくまで一例です。詳しくはガイドラインをご確認下さい。

居住年数に応じて負担も変化

「経年劣化による摩耗や消耗」という事は、居住年数が長ければ長い程オーナー側の負担が増える事を意味します。
具体的には壁紙(クロス)、フローリング、水道周りの消耗品(ゴムパッキン等)の他、柱や梁の軽微な傷等が挙げられ、それぞれに残存価値が予め設定されています。

賃借人の負担割合グラフ
主な設備の耐用年数
耐用年数5年のもの 流し台等
耐用年数6年のもの エアコン類、冷蔵庫、ガス機器、インターホン等
耐用年数8年のもの タンスや戸棚等の金属製でない家具
耐用年数15年のもの 便器、洗面台等、金属製の家具や備品

期間の定めがあるもので最長15年となっておりますので、15年以上居住した借主の場合だと、故意や過失による破損を除き、原則としてオーナー側が全ての補修義務を負う事になります。

敷金の返還について

敷金とは、家賃の未払いや借主側が負担すべき費用等が発生した時に、当該金銭債務を充当するために預かるお金 の事です。
居住用不動産の場合には家賃の1~2か月分を預かるのが一般的ですが、状況によっては入居時に敷金を取らず、退去時にまとめて清算する事もあります。
預かった敷金の取扱いについて予め知っておきましょう。

法改正により敷金返還が義務化

民法や借地借家法に於いて「敷金」についての記載・文言は一切ありません。
つまり、敷金は不動産業界の習慣として根付いているものであり、明確なルールが無かったのです。
度重なる苦情により、遂に2017年4月に「契約や金銭の支払いに関するルールを定めた民法の規定(債権法)を見直す改正法案」が可決され、2020年4月1日に施行される事が決定されました。
今まで法的拘束力が無かった“敷金返還ガイドライン”が明文化された事で、はっきりと敷金の返還が義務化された形になります。

返還の時期

敷金の“返還時期”については、契約書の定めに従う事が一般的です。
例えば、「延滞賃料・損害賠償・原状回復に要する費用の合計額を差し引いた残高を明渡し日の〇か月以内に変換する」といった条項です。
賃貸借契約の解消のほとんどは1~2か月前告知となっているかと思われますので、先方から更新しない旨又は解約の通知を受けた際は、返還の準備を進めておきましょう。

結 論

敷金の返還は2020年より義務化
家主負担の費用を予め把握しましょう
入居年数が多ければ多いほど、家主負担が増す